しかし、今のフォルクスワーゲンの状態は、カルロスゴーン社長が率いる日産自動車さんが数年前にV字回復を終えて、ゴーン社長の敏腕ぶりを報道各社が連日のように伝えていたあのときの状況と非常によく似ていると思う。
AFP通信の報道によると、VWの業績回復の主たる源泉はリストラのようである。リストラは確かに短期的、中期的にみてキャシュ・フローの増大には貢献するであろうが、これからVWが本当の意味で安定した状態を維持して、さらなる成長を続けるためには、もちろん新たな成長戦略が必要であろう。そのための私なりのVWさんへの応援メッセージとして、以下のような点を上げてみた。........(追記へ続く)
*ディーゼルエンジンの更なる進化
日本で最大のディーゼルエンジン供給メーカーであるいすゞさんも、VWさんのTDIエンジンには一目置いている筈である。10年以上に渡って改良を続けてきたTDIエンジンは、今やVWのエンジンの主力。欧州だけではなくバイオディーゼルの使用が推進されている北米市場や南米市場においては、戦略的に非常に重要な技術。VWさんにとって何と言っても心強いのが、ドイツ国内に優秀な部品メーカーさんが数多く存在することだ。中でもボッシュさんとの関係は、今後より一層強固なものにしたいだろう。ボッシュさんは、昨日レポートしたコモンレール、燃料噴射装置だけではなく、エンジンやその他のパワートレインをコントロールする電子制御ユニット(ECU)などにおいてもその高い技術で定評がある。
優秀な部品メーカーさんと協力しならがら、欧EURO5や米Tier−II BIN5などへの対応は、必ずクリヤーしなければならない課題であり、今後のVWさんの成長戦略には欠かせない要素と思われる。
*ハイブリッド
2005年、京都でフランスのミシュラン社主催による自動車のフォーラムが開催された。このフォーラムには私も参加したのであるが、その席でVWさんは、当面の環境対策はクリーン・ディーゼルの開発であり、ハイブリッド車のコンセプトはコストがかかりすぎると言っていた。しかしその後、世界各国でのナフサ価格アップ、ガソリン単価の高騰を受けて、特に北米市場ではトヨタさんのプリウスの躍進振りだ目立つ。またエンジン開発で定評のあるホンダさんでは、難しいと思われていた比較的小型の車、例えばシビックやフィットのクラスにまで搭載可能となるハイブリッド・ユニットの小型化の開発が進められている。こうした日本勢の活躍をVWさんも見逃すことはできないだろう。実際、昨年サンヨーとHEV用のバッテリー開発を行うことを表明するなど、手を打ち始めている。今後のハイブリッド市場における戦略も、とくに北米市場では日本勢への対抗さくとして欠かすことがでいないと思われる。
*不良対策
欧州では強いVWさんであるが、今後日本を含むアジアや北米市場で成長していくため、不良率の削減は、あらゆる課題の中で最も重要と私個人はみる。そう思っている矢先、4月16日には、日本に輸入されているパサート系車両でリコールを報告している。 数年前の三菱自動車さんのリコール問題を見ればお分かりの通り、特に日本の市場は、リコールに大変敏感である。トヨタさんも、不良率として低く保っても、世界No.1が目前となり、増え続ける生産量に合わせて増大する不良の絶対数そのものの削減に向かって、努力を重ねていると想像する。
VWさんも、北米やアジア、不良/リコールを増やすことは、シェアーアップのために、絶対に避けなくてはいけない課題かと思う。車の販売価格を下げるために、品質を下げるようなことを、VWさんが考えるとは、これまでの実績から考えて、絶対にあり得ないことは分かっている。しかし、VWさんも他のメーカーさんと同様に、すべての部品を自分たち自身で製造しているわけではない。今まで以上に、あらゆる部品における品質管理を徹底していく必要があろうかあと思う。
*新興市場
新興市場の中で、なんと言っても、VWさんにとって一番重要なのは中国だろう。VWさんは海外のメーカーとして一番早く中国で現地生産を開始した。10年前に上海に言ったときには、上海VW(上海大衆)さんが製造したサンタナばかりが目に付いた。それが今では、他の欧州勢や日米の自動車メーカーがVWさんの中国におけるシェアーのパイを食い始めている。中国政府も、日欧米と同様に、大気汚染など環境対策に力を入れ始めている。当面、TDIエンジンの更なる性能アップは、中国市場でも、日本勢に対抗する大きな武器となる可能性を秘めていると思う。
*燃料電池車開発
燃料電池車を開発しているのは、日本勢だけではない。ダイムラークライスラーなども日本市場に向かって燃料電池車の開発をアピールしていることを、既にご存知の方も多かろう。
VWも、独自の燃料電池開発を進めているようだ。燐酸型燃料電池だそうで、トヨタさんやホンダさんが主に開発を進めているPEFCよりも、高温で作動するという。PEFCは、樹脂電解質層の耐熱性がまだあまり高くなく、冷却が非常に重要。より高温で作動すれば、あまり大掛かりな冷却装置を使う必要がなくなる可能性もあるだろう。その反面、VWさんが開発を進めている燐酸型燃料電池が、ホンダさん/JSRさん/住友金属さんが開発したPEFCのように、極低温下でもイグニッションできるんかという疑問が残る。
日本勢が進めている燃料電池、VWさんが新たに開発を進めている燃料電池それぞれに、まだまだ一長一短がありそうだ。
燃料電池の技術は、クリーン・ディーゼル・エンジンやハイブリッド車など現在世界の自動車メーカー各社が力を入れている技術のその次の世代を担う技術となろう。電気自動車を含めて、こうした未来技術に力を入れることも、VWさんにとって非常に重要なことであろう。
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